団鬼六、まだ二足のわらじ
「団鬼六、きろくでもおにろくでも読み方はどちらでもいいですよ」と鷹揚。
氏の小説は被加虐な性愛を精神の高みに昇華させる。
作家というよりも教師みたいな雰囲気を漂わせていると思っていたら、
その昔中学校の英語教員をしていたと。
何かの本で「私は、縛った女を犯すという無粋なことはしません」と、
オトコの矜持めいたことをさらりと仰有っていた。
さて『奇譚クラブ』のこと。
アブノーマルな性愛を描くけどアカデミックなページも欠かさないよ、
といった気概を持って発行されたSM雑誌『奇譚クラブ』、
1947年(昭和22年)〜1975年(昭和50年)。
すべてのページがネットで公開されている。
製作に携わった人たちの志の高さがうかがえるというものだ。
この雑誌のファンだった団鬼六。
1955年(昭和30年)、懸賞小説に「お町の最後」を投稿して一位入選、
のちに花巻京太郎名で連載した「花と蛇」(1962年8・9合併号から)が、
SM小説、SM映画を堂々と陽ノ下に晒すことになった。
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懐かしき奇譚クラブ・バックナンバー
https://nawa-art.com/backnumber/backnumber.htm
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週刊現代2022年7月2・9合併号
『団鬼六』グラビア特集、知らないことばかりなので全8ページをスキャニング。
:
団鬼六、まだ二足のわらじ
締め切りが迫っていた。
壇上で「きょうは自習にします」と手短に告げる英語教員の黒岩(団鬼六)。
教卓に原稿箋を広げるとすぐさま小説を書き始めた。
教室では生徒たちが静かに英語の教科書をめくっている。
中学生といってもまだ子ども、先生の指示に素直に従っていた。
さて教員の黒岩が書いているのはSM官能小説、
奇譚クラブに連載中の『花と蛇』。
話がいよいよクライマックスに差しかかって、ついセリフが声に出る。
「ああ、わたしもう駄目よ」。
一心不乱、身もだえしながら教卓に向かって何やら書いているのを、
生徒たちが気づかないわけがない。
抜き足差し足、数人が教壇に上がってそお〜っと覗きこんで原稿箋を眼で追った。
「うわすげえな、なになに、どうなっちゃうのこの女性(ひと)!」。
ちょうど校内を巡回中だった教頭先生、
教室のただならぬ熱気に気づいて入ってきて教卓に眼を落として、
「ねえ黒岩君、この続きはどこで読めるの?」。 #twnovel #ツイノベ #140字物語
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